一般社団法人日本越境EC振興協会|eBay輸出

あなたは海外でブームになっている日本酒を輸出したいと思ったことはありませんか?本記事では、公的機関で越境ECアドバイザーをしている著者が日本酒の市場推移、輸出するために必要な輸出酒類卸売業免許の手続き、越境ECで販売できるのか、国際発送できる国、発送手段、酒税の免税制度を解説させていただきます。

【越境EC】日本酒を輸出するための完全ガイド集[最新版]

日本酒の輸出実績推移

まず日本酒の市場動向を捉えます。

日本酒造組合中央会による日本酒の輸出実績推移

まず、Sake(おさけ)市場全体の推移は、過去13年間右肩上がりだったのが、初めて減少しました。

要因としては、中国の景気減速、日本産水産物輸入の停止に伴う日本食レストランの不振、米国における消費マインドの減衰が考えられています。

日本酒輸出実績

日本酒造組合中央会が発表している市場推移について詳細を知りたい方はPR TIMESをご覧ください。

国税局による日本酒輸出ハンドブック

国税庁から「日本酒輸出ハンドブック」が発行されており、アジア主要国向け、韓国編・中国編・台湾編・香港編、北米向けにカナダ編、アメリカ編があります。

内容は市場の動向、各国の特徴、販路などが記載されていますが、大変、有益な情報源です。

国税局による日本酒輸出ハンドブック

国税局による日本酒輸出ハンドブックについて詳細を知りたい方は国税局による日本酒輸出ハンドブックのページをご覧ください。

日本酒の輸出に必要な免許の基本的な手続き

日本酒を輸出するためには、通常の輸出手続きに加えて、酒類に関連する特定の手続きが求められます。

お酒の販売に関する監督省庁は国税庁

国税庁が日本酒の販売に関しては監督省庁になります。酒税法を策定し、酒税の徴収に関与しています。

日本国内で酒類を販売する場合、製造業者・卸売業者・小売業者のそれぞれに免許が必要になります。

よって、日本酒に関しては、国税庁の情報をよくチェックする必要があります。

お酒に関する情報

日本酒に関する情報について詳細を知りたい方は国税庁のお酒に関する情報をご覧ください。

酒類販売業免許の申請

輸出酒類卸売業免許は、自社で酒類を輸出して海外の業者に卸売することができる免許です。
「貿易業をやっていて、「日本酒も輸出したい」という場合に必要な免許が、『輸出酒類卸売業免許』になります。
越境ECで海外の消費者に販売したいという場合、以前は一般酒類小売業免許で販売できたのですが、2022年からは輸出酒類卸売業免許が必要になりました。

免許申請~審査

各卸売販売地域における免許可能件数は、毎年9月1日に卸売販売地域内の各税務署の掲示板等に公告、国税庁ホームページに掲載されます。
9月1日から9月30日までの期間に申請を行い、公開抽選の対象となります。
10月中に公開抽選を行い、審査の順位を決定します。
その後、審査時に2週間以内に書類を提出します。

個別・具体的な相談がある場合には、所轄税務署を担当する酒類指導官までお問い合わせください。

申請書の記載事項①~⑥

申請時に必要な書類は以下の通りになります。

①酒類販売業免許申請書

申請者の住所、名称、申請場所の地番と住居表示、申請する免許の内容など必要事項を記載します。

②申請書次葉1「販売場の敷地の状況」

販売場が建物の一部であっても建物の全体図にその位置を示します。
酒類販売業免許は地番を指定して免許されますので、申請する販売場の建物がどこの地番の上に建っているのか分かるようにします。
そして申請場所が建物のどの位置にあるのかがわかるようにします。

③申請書次葉2「建物等の配置図」

倉庫部分や、酒類の陳列場所における表示について申請場所の位置を図示します。いわゆるレイアウト図です。
入口、机、パソコン、複合機の位置等わかるように記載します。申請場所と倉庫が同じ場所にあれば、倉庫等についても記載します。
この場所で小売免許も取得する場合には、酒類販売管理者の標識の掲示位置も図示する必要があります。

④申請書次葉3「事業の概要」

店舗等の広さ、什器備品等について、次葉2の配置図の内容を具体的な数量にして記載します。
敷地や事務所の面積、机やパソコンの数量、従業員の人数を記載します。

⑤申請書次葉4「収支の見込み」

事業計画、規模にあった収支見込みを作成します。
酒類の仕入先と販売先の名称と所在地を記載します。
あくまでも見込みですので、免許後に算出数量通りに販売できなくても問題ありません。

⑥申請書次葉5「所要資金の額及び調達方法」

自己資金の場合は資金捻出の根拠説明書、融資の場合は融資証明書をそれぞれ提出します。
次葉4で算出した販売数量を基に、最初の仕入に必要な金額を算出します。また新たに設備の購入が必要であれば、その設備代金も記載します。
そして最初の仕入れ代金と設備費用を賄える所要資金がいくらあるのか記載します。

申請書の添付書類①~⑧

①酒類販売業免許の免許要件誓約書

申請者、申請者の法定代理人、申請法人の役員及び申請販売場の支配人について、提出します。
人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件、その他の要件について誓約します。

②申請者の履歴書(法人の場合には、役員全員の履歴書)

申請者自身の職歴(勤務した会社名、業種、担当事務内容)を記載した履歴書を作成します。

③定款の写し

申請者が法人の場合は、申請時時点の定款の写しが必要です。
事業目的には「酒類販売業」等の、酒類を販売することがわかる項目があることが必要です。例えば「食品、飲料及び酒類の販売」等です。

④契約書等の写し

土地、建物等が賃貸借の場合は賃貸借契約書等の写し、建物が未建築の場合は請負契約書等の写し、農地の場合は農地転用許可に係る証明書等の写しを提出します。
賃貸契約書のコピーは全ページの提出が必要です。

⑤地方税の納税証明書

都道府県及び市区町村が発行する納税証明書で、申請者につき各種地方税の納税証明書が必要です。

  • 未納の税額がない旨
  • 2年以内に滞納処分を受けたことがない旨

の両方の証明がされたものを添付する必要があります。

⑥最終事業年度以前3事業年度の財務諸表

法人の直近3年分の決算書の貸借対照表及び損益計算書が必要です。この決算書で経営基礎要件をクリアしているの確認されます。
設立してまだ3年経過していない場合は、経過分のみの提出で問題ありません。

⑦土地及び建物の登記事項証明書

登記事項証明書は、全部事項証明書に限ります。
申請販売場の建物が複数の土地にまたがる場合には、その全ての地番に係る土地の登記事項証明書が必要になります。

⑧免許申請書チェック表

必要な添付書類が添付されているかを確認し、チェックしてください。

輸出入酒類卸売業免許の手引き

国税庁の輸出入酒類卸売業免許の手引きについて詳細を知りたい方は輸出入酒類卸売業免許の手引きをご覧ください。

免許の申請・許可が下りたら、ようやく販売を開始することができるようになります。

日本酒を越境ECで販売できるのか

海外ECモールではなく、直販サイトで注文の受け付け

日本酒を越境ECで販売できるのかについて、販売できます。この場合は、eBay、Amazon、Shopeeなどの海外ECプラットフォームを活用するのではなく、ショッピファイ(Shopify)などで自社の直販サイトを構築し、注文受付を準備する必要があります。

海外ECモールでの販売ではないため、集客を自分でする必要があります。

eBay禁止商品リスト

eBayに出品してはいけないものについて詳細を知りたい方は税関で禁止されている商品・国際発送できない商品・eBayの出品禁止品・VeRO・パテントロールをご覧ください。

ショッピファイのストアを登録する方法

ショッピファイのストアを登録する方法について詳細を知りたい方はストア開設ガイドをご覧ください。

集客はどうすればよいのか?デジタルマーケティングの活用(SNS・広告)

海外ECモールへ出品することができずに直販サイトにする場合、集客はどのようにすればよいのでしょうか?
それはSNSやグーグル広告などのデジタルマーケティングを活用していくことになります。

越境ECではどのSNSを活用すべきなのか

越境ECではどのSNSを活用すべきなのか詳細を知りたい方は越境ECではどのSNSを活用すべきなのかをご覧ください。

Google広告

グーグル広告について詳細を知りたい方はGoogleキーワードプランナーを活用してリサーチする方法をご覧ください。

展示会・試飲イベントへの出展

リアルでは展示会や試飲イベントへ出展する方法があります。展示会への出展する方法については、別途、解説させていただきます。

日本酒の銘柄をアッサンブラージュするような創意工夫が必要です。

個人輸出における日本酒の発送は?

Fedexで、日本酒を国際発送するためには、売り手も買い手も酒類の販売業者である必要があります。よって、日本酒を個人輸出する場合は、日本郵便EMSかDHLを使うのが一般的になります。

アルコール飲料の発送国の早見表が分かりやすい

アルコール飲料を国際発送される場合、内容品のアルコールの度数によって配送方法が異なります。発送の早見表は以下になります。

アルコール飲料の配送について

アルコール飲料の地域別・発送手段別の詳細を知りたい方はアルコール飲料の配送可否一覧表をご覧ください。

上記は個別発送ですが、それぞれクーリエや日本郵便UGXなどに電話で確認した所、まとめての国際発送は可能になります。

引き受けの条件はアルコール度数

アルコール度数によって引き受けできるかどうかが変わります。
アルコール度数24%以下の飲料は「日本郵便」で配送可能です。
アルコール度数24.1%以上70度までの飲料は「DHL」で配送できます。

日本酒の輸出用のラベル

日本酒の輸出用の標準的なラベルとガイドラインが2019年8月に日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)から発行されています。

詳細は日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)のガイドラインをご参照ください。

輸出用標準的裏ラベルと表記ガイド(簡易版)

輸出用標準的裏ラベルと表記ガイド(簡易版)について詳細を知りたい方は輸出用標準的裏ラベルと表記ガイド(簡易版)をご覧ください。

輸出用の「標準的裏ラベル」と「表記ガイド」(JFOODO)

輸出用の「標準的裏ラベル」と「表記ガイド」について詳細を知りたい方は輸出用の「標準的裏ラベル」と「表記ガイド」をご覧ください。

税務申告

税理士の1科目にもある通り、酒税が課税されます。

コラム 酒税の輸出免税制度

消費税の還付以外に酒税の輸出免税制度があります。蔵元から移出された段階から課税対象となりますが、輸出には酒税の免税制度があります。日本酒を販売しようと思ったら、まず、これらについて十分に理解を深めるようにしてください。

酒税の輸出免税を受ける場合の手続

酒税の輸出免税を受ける場合の手続について知りたい方は国税庁の免税FAQをご覧ください。

まとめ

いかがでしたか?本記事では、公的機関で越境ECアドバイザーをしている著者が日本酒の市場推移、輸出するために必要な輸出酒類卸売業免許の手続き、越境ECで販売できるのか、国際発送できる国、発送手段、酒税の免税制度を解説させていただきました。

酒類の販売の免許が必要であり、販売開始までのハードルは比較的高いと言えます。蔵元でなければ価格競争力が優位ではありません。それ以外は、アッサンブラージュするような創意工夫が必要と考えます。

よって、販売先の見込みがない状態で、日本酒がブームだから転売で個人輸出をしようする方法は推奨していません。